東京高等裁判所 昭和31年(う)2549号 判決
被告人 和田正久
〔抄 録〕
弁護人の論旨第一について。
論旨は原判決が原判示第一の覚せい剤二千本の譲受行為と原判示第二の覚せい剤四百本の所持とを別罪として処罰しているのは法令の適用を誤つたものであるとし、その理由として右の所持は右譲受行為の当然の結果であるから別罪を構成するものではないと主張する。しかしながら覚せい剤を譲り受けた者が、時間的空間的関係において格別の推移変動の認められない状態においてこれを所持するときは、その所持を譲受に随伴する必然的結果として譲受行為に包括吸収せられるものと解すべきであろうが、譲受後における所持に若干の時間的推移と空間的変動とを来たし、社会通念上新たな所持が開始されたと目される場合には、もはや、これを以つて譲受行為に包括せられるものということはできない。原判決の認定した事実によると、被告人は第一、浅井義弘、和田りう子と共謀の上昭和三十年七月十一日頃東京都新宿区市谷富久町百十九番地田中正義方横路上において呉君子よりフエニルメチルアミノプロパン塩を含有する覚せい剤注射液五立方糎アンプル入約二千本を譲り受け第二、浅井義弘、前川英二と共謀の上同月二十日頃同都新宿区市谷富久町七十一番地大沼千代方前川英二の居室において前記覚せい剤注射液約四百本を所持していたというのであつて、右第二の所持はその方法態様から見て右第一の譲受行為に必然的に随伴するものとは認められないから別個独立の所持罪を構成するものと解するのが相当である。それゆえ原判決には所論のような法令適用の誤はなく、論旨は理由がない。
(谷中 坂間 久永)